経験学習のススメ

経験学習とは

私たち社会人の能力開発に研修やトレーニングが大切なことは言うまでもありませんが、実際はそのほとんどが日常の仕事を通して行われていると言われています。そういう意味では、私たちは既にたくさんの「経験からの学習」を体験しているわけです。
変化スピードの加速化、価値観の多様性、状況の不確実性といった時代にあって、これまでのやり方で大丈夫でしょうか?変化に対応できるでしょうか?
変化の量と質に匹敵するかそれを上回る「学習」をしなかったら、この時代を生き抜くことは難しいでしょう。
では、どのような種類の「学習」が必要なのでしょうか?
知識やスキルを学ぶこと? トレーニング? 意識を変えること? どうやって?
これからご紹介する「経験学習」の考え方が、私たちのそんな疑問に答えてくれます。

コルブの経験学習サイクルモデル
コルブ(1984)は、知識付与型の学習やトレーニングと区別して、「経験から学ぶプロセス」を経験学習サイクルとしてモデル化しています。この理論では、経験からより良くより深く学ぶには、「具体的な経験」をじっくり振り返るプロセスが大切だと言っています。また振り返ったら、それを次の経験に活かせるように「抽象的概念化」することが重要だ と言っているのです。 ※抽象的概念化とは、何故そうなったか、どうすればよいか、などの考えを一般的な言葉で整理し表現することだと考えるとよいでしょう。
そしてそこで得た新しい考えや方法に基づいて行動を起こせば、今までとは異なる具体的な経験を積むことになり、経験学習はより良い形でまわっていくわけです。
経験からより良く学ぶための能力(コルブ)

しかし経験を振り返るときに、いつもと同じ思考、同じ価値観だったら、いつもと同じ概念化が出来るだけ、いつもと同じ行動が生まれるだけ、いつもと同じ経験を積むだけです。
また振り返っても、十分に考えて概念化をしなかったら、行動の変化は起きづらいでしょう。
またせっかく概念化をしても行動を起こさなければ、今までと異なる経験は積めません。
コルブは、経験からよりよく学ぶための能力として、次の4つの能力をあげています。

1) 新しい経験に関わることへの開放性や自発性(具体的な経験)
2) これらの新しい経験をさまざまな視座・視点から見ることのできる観察と振り返りの能力(省察的観察)
3) この経験から統合的な考えや概念を生み出すことのできる分析的能力(抽象的概念化)
4) これらの新しい考えや概念を実際の実践に使うことのできる決断や問題解決のスキル(実践的試み)

変化に対応するためには、過去の役に立たなくなったものを捨て、新しい対応方法を取り入れなければなりません。しかし全ての物事には継続性がありますから、「現状の知識・情報・スキル・考え方」と「変化に対応するために新しく必要とされる知識・情報・スキル・考え方」を統合して、新しい実践(変革行動)を生み出すことが求められているのです。
こんな時代だからこそ、自らの経験を冷静に深く振り返って、そこから未来に向けた生産的な学習を摘み取り、実践的行動につなげる「経験学習」が重要なのではないでしょうか。